40歳になると、介護保険料の支払いが始まります。しかし、実際にはその金額や計算方法、老後にどう影響するかについてはあまり知られていません。
介護保険は、介護が必要と認定されたときから、介護サービスを1割から3割の費用負担で利用できる制度です。
この記事では、介護保険料の基本的な仕組みから、65歳以上での変化、さらに滞納時のリスクまで、生涯にわたり支払い続ける介護保険料について解説します。
介護保険料はいくら?
介護保険料は、40歳から一生涯支払い続けます。介護保険料は年齢で区分されており、65歳以上の人は「第1号被保険者」、40歳から65歳未満の人は「第2号被保険者」となります。
介護サービスを利用している人は65歳以上の方が多くなるため、65歳以上の第1号被保険者の方が、支払う保険料は高くなります。
65歳以上の介護保険料(第1号被保険者)
65歳以上の介護保険料は、所得に応じて、住んでいる市区町村ごとに決まります。市区町村ごとに決まる理由は、介護保険を利用する人数や内容により、必要な費用が市区町村ごとに異なるためです。
保険料は3年に1度見直され、保険料の全国平均は月額6,000円程度です。市区町村ごとに設定された「基準額」に対して、個人や世帯の所得に基づいて段階的に計算されます。所得が高いほど、支払う保険料も多くなります。
基準額 = 介護サービスに必要な費用 × 65歳以上の方の負担割合 ÷ 65歳以上の人数
標準の段階設定は9段階ですが、市区町村が別途定めることができます。たとえば、東京都渋谷区の介護保険料は第16段階になっており、第1段階と第16段階では金額に大きな差があります。
例)渋谷区の介護保険料
段階 | 所得基準 | 負担割合(基準額:71,520円) | 年間保険料額 | 月額保険料 |
---|---|---|---|---|
第1段階 | 生活保護受給者、老齢福祉年金受給者で世帯全員が住民税非課税 | 基準額×0.25 (14,300円減額) | 17,900円 | 1,492円 |
第6段階 | 本人が住民税課税合計所得金額が125万円未満 | 基準額×1.01 | 72,200円 | 6,012円 |
第16段階 | 本人が住民税課税合計所得金額が1億円以上 | 基準額×6.00 | 429,100円 | 35,758円 |
支払い方法は特別徴収と普通徴収
年金額が年間18万円以上の人は「特別徴収」で年金から天引きされます。年金額が18万円未満の人は「普通徴収」で納付書払い・口座振替で納付します。
参考:金融広報中央委員会「知るぽると」 介護保険制度のしくみ
40歳から64歳の介護保険料(第2号被保険者)
40歳から64歳の介護保険料は、加入している医療保険(健保組合、全国健康保険協会、市町村国保など)の保険料と合わせて納付します。
介護保険料は、加入している健康保険によって異なります。
- 職場の「健康保険」に加入している人
医療保険ごとに設定されている介護保険料率と給与等で決まり、事業主と被保険者で半分ずつ負担します。 - 「国民健康保険」に加入している人
国保加入者の所得や資産、人数などに応じて世帯単位で決まります。組み合わせ及び各項目の金額・割合(%)は、各市町村が決めます。 - 「国民健康保険組合」に加入している人
介護保険料は規約で決まります。
出典:金融広報中央委員会「知るぽると」 介護保険制度のしくみ
働いている人は給与から天引きされる
介護保険は、加入の手続きをする必要はなく、40歳になると自動的に給与から天引きが開始されます。
介護サービスの自己負担が原則1割になる
介護保険に加入している人が介護サービスを利用する際、原則として費用の1割が自己負担となります。しかし、一定以上の所得がある場合は2割から3割負担になります。
たとえば、10,000円の介護サービスを利用した場合、1,000円が利用者の自己負担額となり、残りの9,000円は介護保険から支払われます。
介護サービスを受けられる条件
介護サービスを利用するためには、「要支援」または「要介護」と認定される必要があります。また、40歳から64歳の人は特定疾病に限定されます。
対象者 | 受給要件 |
---|---|
65歳以上の人 (第1号被保険者) | ・要介護状態 ・要支援状態 |
40歳から64歳の人 (第2号被保険者) | 要介護(要支援)状態が、 老化に起因する疾病(特定疾病)による場合に限定される |
特定疾病とは?
- がん(医師が一般に認められている知見にもとづき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関
参考:厚生労働省 介護保険とは
参考:厚生労働省 介護保険制度について(40歳になられた方へ)
受けられる介護サービス
受けられる介護サービスには、日常生活の支援から医療的なケアまで幅広い種類があります。たとえば、食事や入浴の手伝い、リハビリテーション、家事支援などがあります。
受けられる介護サービスの例
自宅で利用するサービス | 訪問介護、訪問入浴、訪問看護、福祉用具貸与 |
---|---|
日帰りで施設等を利用するサービス | 通所介護(デイサービス) 通所リハビリテーション(デイケア) |
宿泊するサービス | 短期入所生活介護(ショートステイ) |
居住系サービス | 特定施設入居者生活介護 |
施設系サービス | 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設 |
介護保険料を滞納すると自己負担割合が増える
介護保険料を滞納すると、将来介護サービスを利用する際の自己負担割合が増加する可能性があります。滞納期間に応じた影響についてみてみましょう。
滞納から1年未満の場合
納付期限から20日を過ぎ、滞納が始まってから1年未満の場合は、督促状が届き延滞金を請求されます。
滞納から1年以上の場合
滞納が1年以上続くと、自己負担割合の増加が始まります。本来は1割から3割負担で済むところを、10割分支払わなくてはいけなくなります。その後に滞納分を支払い、払い戻しを申請することで、7割から9割が払い戻しされます。
滞納から1年半以上の場合
滞納期間が1年半を超えると、1年以上の場合と同様に、10割分の支払いが必要となります。そして、滞納した保険料にあてられるため、払い戻しはありません。
滞納から2年以上の場合
滞納が2年以上続く場合「未納」が確定し、滞納分の支払いはできなくなります。自己負担の割合が引き上げられ、3割から4割負担になります。さらに、高額介護サービス費制度を利用できなくなります。
介護保険料を減免や軽減できる条件
生活が困窮している場合や、災害などにより損失を受けた人、介護保険料の納付が困難である人などを対象に、介護保険料を減免する制度があります。利用する際は、住んでいる市区町村に申請します。
- 震災・風水害・火災等の災害により大きな被害を受けた方
- 入院や事業における損失などで収入が著しく減少した方
- 世帯の年収が低く生活が困難な方
- 各市区町村が独自で設定する条件に該当する方
介護費用が足りない場合は自宅を活用して資金調達できる
年金収入だけでは介護費用を賄うのが難しい場合、自宅を活用して資金を調達する方法があります。
イエするのリースバックで自宅を現金化する
リースバックは、自宅をリースバック専門会社に売却し、その後賃貸として住み続ける方法です。この方法では、自宅を現金化しつつ、住み慣れた自宅に住み続けることができます。リースバック専門店の「イエする」は、最短5日で現金化することができます。
リバースモーゲージで自宅を担保にお金を借りる
リバースモーゲージは、自宅を担保にして金融機関からお金を借りる方法です。借入金は、借主の死亡後に不動産の売却で返済されます。
まとめ:介護保険料は支え合い。滞納なく支払おう
介護保険料は、将来必要となる介護を社会で支え合い、老後の不安を軽減する仕組みです。
介護保険料を適切に支払うことで、将来的に必要となる介護サービスの利用時における自己負担額を抑えることができます。支払いが困難な場合には、自治体の相談窓口を利用することや、自宅を活用して資金を得るなど、適切な支援を求めましょう。
年金だけでは介護資金が不足する場合は、持ち家をリースバックすることでまとまった資金を得ることができます。リースバック専門店「イエする」までお気軽にご相談ください。