自宅を活用して資金を調達できる仕組みとして注目されているリバースモーゲージとリバースバック。似ているようで実は明確な違いがあります。
リースバックもリバースモーゲージも「不動産を活用して資金を調達する方法」という点で共通です。両者を混合してしまう方もいるでしょう。
しかしリースバックとリバースモーゲージには根本的な違いがあり、向いている人も状況によって異なります。
この記事では、リースバックとリバースモーゲージの違いやそれぞれのメリット・デメリット、どちらが向いているかをお伝えします。ご自身の状況に照らし合わせながらご確認ください。
不動産を使って資金調達したい人、家を売っても住み続けたい人はぜひ参考にしてください。
リースバックとリバースモーゲージの違い
不動産取引か、金融商品か
リバースモーゲージとリースバックでは、商品の位置づけが異なります。リバースモーゲージは自宅を担保に融資を受ける金融商品、リースバックは売却と賃貸を組み合わせた不動産取引です。リバースモーゲージは「借入」であるため担保と返済を必要としますが、リースバックは「売却」であるため担保と返済を必要としません。
利用対象者に制限がある
金融商品であるリバースモーゲージは、利用にあたり様々な条件を満たさなければなりません。具体的な利用条件はケースにより異なりますが、前述の通り対象年齢は原則65歳以上(60歳以上80歳未満が中心)となっています。
また同居家族も原則は配偶者のみです。お子様などが同居している場合、担保となっている不動産をスムーズに売却できないケースが多いからです。反対に不動産取引であるリースバックは、利用対象者に関する制限を原則として設けていません。またお子様が同居していても利用可能です。
対象物件に制限がある
金融商品であるリバースモーゲージは、対象物件にも制限があります。対象物件になるのは、原則一戸建てです。このような制限を設けている理由は、土地で担保価値を評価しているからです。
時間の経過とともに資産価値が減少していく建物は、基本的に評価対象にはなりません。リースバックは、対象物件に関する制限もありません。
所有権の移転するタイミングが異なる
自宅の所有権に関しても違いがあります。自宅を担保に融資を受けるリバースモーゲージは、基本的に所有権は移転しません。移転するのは、借入金返済のために自宅を売却するとき、つまり契約期間終了後などです。相続人の手元資金などで借入金を返済すれば、所有権が移転することはありません。
これに対しリースバックは、自宅を売却するときに所有権は移転します。ただし、再売買できる権利を付けておくことで、将来的な再購入も可能です。
資金の使い道に関する制限が異なる
資金用途の制限もリバースモーゲージとリースバックの大きな違いの一つです。リバースモーゲージの資金使途には多くの場合、制限が設けられています。具体的な資金使途はケースで異なりますが、社会福祉協議会が提供しているリバースモーゲージの資金用途は原則生活資金に限定されています。
金融機関が提供しているリバースモーゲージの資金用途は、基本的に事業資金・投資資金以外です。調達した資金を自由に使うことはできません。これに対し、リースバックは自宅を売却して資金を調達するため、用途は自由です。老後資金のほか、住宅ローンの返済、事業資金、教育資金など利用者の人生設計に合わせて活用できます。
固定資産税・都市計画税の納税義務者が異なる
自宅の所有権に関する違いがあるため、リバースモーゲージとリースバックでは固定資産税・都市計画税の納税義務者も異なります。所有権が移転しないリバースモーゲージでは、これまで通り自宅の所有者(この場合は本人)が固定資産税・都市計画税を納めなければなりません。
所有権が移転するリースバックでは、新しいオーナーが固定資産税・都市計画税を納めることになります。リースバックの方が、自宅の維持費は少ないといえるでしょう。
家賃支払いの有無が異なる
リースバックの場合、利用した後は不動産会社へ毎月家賃を払わなくてはなりません。リバースモーゲージの場合、物件の賃借人になるわけではないので、家賃を払う必要はありません。
ただし、各社のサービス内容に違いがあり、利子のみ毎月支払いの必要がある場合があります。
お金を受け取る方法が異なる
リースバックの場合、リバースモーゲージと比べてお金を受け取る方法が異なります。
リースバックでは、お金は家を売却したときに一括で受け取ります。住宅ローンが残っていたらまずは残債の支払に充て、後は何に使ってもかまいません。
一方リバースモーゲージの場合には年金方式で少しずつ受け取っていくケースが多数となっています。融資とはいえ、お金を一括で受け取れるわけではありません。
リバースモーゲージとリースバックでは、お金を一括で受け取れるか徐々に受け取っていくのか、という違いもあるといえるでしょう。
リースバックとリバースモーゲージの類似点
リースバックとリバースモーゲージの類似点は、以下のとおりです。
不動産を活用してお金を調達できる
リースバックでもリバースモーゲージでも、自宅などの不動産を活用してお金を調達できます。
リースバックの場合には家を売却して売却金を取得し、リバースモーゲージの場合には家を担保にお金を借ります。自宅不動産を所有している人がお金を調達できる点では、結果や目的が共通しているといえるでしょう。
利用後も家に住み続けられる
リースバックを利用する場合でもリバースモーゲージを利用する場合でも、今の家に住み続けられます。
ただしリースバックの場合には賃借人として、リバースモーゲージの場合には所有者としての立場になります。「金銭調達はしたいけれど、家には住み続けたい」という方にとっては両方とも便利に利用できるでしょう。
リースバックとリバースモーゲージの比較
リースバックとリバースモーゲージの違いを比較すると、以下のとおりです。
リースバック | リバースモーゲージ | |
---|---|---|
仕組み | 不動産を売却して、その後は賃借人として家に住む | 家を担保に融資を受ける |
借り入れの有無 | なし | あり |
所有権の移転 | あり | なし |
担保の設定 | なし | あり |
年齢制限 | なし | ある場合が多い(65~80歳程度となるケースが多い) |
利用者に関する審査 | なし | あり(銀行による審査がある) |
資金の使い道 | なし | ある場合が多い |
固定資産税や都市計画税の納税義務者 | なし | あり |
家賃支払いの有無 | あり | なし |
リースバックとリバースモーゲージの根本的な違いは、リースバックは「物件の売却」であるのに対し、リバースモーゲージは「物件を担保にした借り入れ」である点です。リースバックの場合、物件を売却してしまうので、その後の立場は賃借人です。
一方リバースモーゲージの場合、利用後も所有者のままでいられます。その代わり、固定資産税などの税金は払わなければなりません。またリバースモーゲージの場合、年齢制限や資金の使い道に関する制限など、いろいろな制限をつけられるケースが多数です。こういったことはリースバックにはありせん。
自由にお金を使いたい人や、家族が相続でもめないようにしたい高齢の方や、若い人の場合、リースバックの方が適しているといえるでしょう。
なおリースバックでも買い戻し(再売買といいます)は可能です。リースバックで再売買をした場合にはまた物件の所有者に戻れるので、永遠に家を手放した状態になるとは限りません。
リースバックの特徴
リースバックの特徴は、家を売っても家に住み続けられることです。
不動産を売ると、通常は買い手が不動産を利用するようになるので売り手(元の所有者)は物件を使えなくなるものです。しかしリースバックの場合、家を売っても賃借人という立場で家に住み続けられます。
「資金は必要だけれども家に住み続けたい」というニーズに応えられるのがリースバックといえるでしょう。
ただしリースバックを利用すると家の所有権は手放すことになります。所有者と同じように家を自由に使えるわけではあリません。リフォームや増改築等の場合、リースバック業者の許可が必要になる可能性があります。
またリースバックを利用すると、月々の家賃が発生します。無償で家に住み続けられるわけではないので注意が必要です。
リースバックのメリット・デメリット
リースバックのメリット
リースバックには以下のようなメリットがあります。
売却後しても自宅に住み続けられる
リースバックを利用すると、家を売却しても住み続けられます。まとまった資金がほしいけれど居住環境を変えたくない方には大きなメリットがあるでしょう。
周囲に知られにくい
リースバックの場合、家を売り出すわけでもありませんし、居住者も変わりません。近所の人などに家の売却を知られにくいメリットがあります。
短期間で現金を入手できる
すぐにまとまったお金が必要でも、融資を利用できるとは限りません。融資の審査には時間もかかってしまいます。リースバックの場合には短期ですぐに現金を入手できるメリットがあるといえるでしょう。
年齢制限がない、保証人が不要
一般的な借り入れには年齢制限があったり保証人が必要だったりしますが、リースバックには通常、年齢制限がありません(未成年の場合を除く)。保証人も不要なので、多くの方が利用しやすいメリットがあります。
お金の使い道は自由
リースバックで入手した現金は自分の好きなように利用できます。使用用途に制限がありません。
所有者としての負担がなくなる
売却後は家の固定資産税等などの税金などの支払いが不要ですし、自然災害による破損などのリスクも負う必要がなくなります。
買い戻す(再売買)こともできる
将来、買い戻し(再売買)をすればまた元のように家の所有者に戻れます。一時的に資金が必要なとき、リースバックでお金を調達してその後に買い戻し(再売買)をする活用方法が役立ちます。
リースバックのデメリット
リースバックには以下のようなデメリットもあります。
売却額が相場より安くなる
リースバックによる家の売却額は、相場より低くなるのが通常です。高値で売りたい方にとってはデメリットと感じるでしょう。
ただ将来買い戻すなら、安値で売った方が安値で買取りやすくなります。その意味では大きなデメリットにはなりません。
オーバーローンの場合は利用できない
住宅ローンが残っている状態でリースバックを利用するには、住宅ローンを完済しなければなりません。オーバーローンの場合には利用できないのは一定のデメリットといえるでしょう。
居住期間が制限されるケースが多い
定期賃貸借契約になる場合、居住期間が制限されます。契約期間が満了すると家を退去しなければならないデメリットがあります。
定期賃貸借契約終了後も家に住み続けたい場合には、貸主との再契約の締結が必要となります。
リバースモーゲージの特徴
リバースモーゲージの特徴は、高齢者が家を担保にしてお金を借りられることです。一般的に働いていない年金世代がまとまったお金を借りるのは簡単ではありません。金融機関へローンを申し込んでも審査で落ちしてしまうケースが多いでしょう。
リバースモーゲージなら、家を担保にお金を借りられます。むしろ高齢者をターゲットにした商品なので、一般のローンを組めない年齢の方でもリバースモーゲージなら利用できます。
リバースモーゲージの注意点は、利用者が死亡すると担保権が実行されて家の所有権が失われることです。相続人が「家を相続できる」と期待していると、その期待は裏切られる結果になってしまいます。
リバースモーゲージを利用する際には、相続予定者へ「家を担保にリバースモーゲージを利用するので、相続はさせられない」と断っておく必要があります。リバースモーゲージには相続人の同意がないと利用できないと考えた方が良いでしょう。
以上のようにリースバックは「家を売っても住み続けたい人」、リバースモーゲージは「家があって生活費などの資金調達をしたい高齢者」をそれぞれターゲットとしており、活用する場面が大きく異なるといえます。
リバースモーゲージのメリット・デメリット
リバースモーゲージにはどのようなメリットとデメリットがあるのか、みてみましょう。
リバースモーゲージのメリット
自宅を担保に融資を受けられる
リバースモーゲージの1つ目のメリットは、自宅を担保に融資を受けられる点です。
所得が高くなくても現役世代ではなくなっても、家さえあれば担保にして資金調達ができます。生活費が足りていない場合などには大きな助けとなるでしょう。
毎月の返済額は利息のみとなって低くなる
リバースモーゲージは借金なので、利用後に返済しなければなりません。ただし返済額は利息のみとされ、低額になるのが一般的です。通常の借り入れのように元本ごと返済しなくて良いので、負担が軽くなりやすいのもメリットといえるでしょう。
極度額までであれば何度でも借りられる
リバースモーゲージを利用する場合には、極度額を設定するのが一般的です。極度額とは、借り入れができる最高額のことです。
リバースモーゲージを利用する場合、極度額以内であれば何度でも借り入れができるケースが多数です。資金に困ったときに繰り返し借り入れができる可能性があるのもメリットの1つといえるでしょう。
家に住んだまま資金調達ができる
リバースモーゲージの場合にも、リースバックと同様、家を出ていく必要がありません。家に住んだまま資金を調達できるのもリバースモーゲージのメリットといえるでしょう。
リバースモーゲージのデメリット
年齢や所得などの制限がある
リバースモーゲージには、年齢や所得に関する制限があります。
あくまで金融機関による融資なので、借入人についての審査が行われるのです。所得が一定以下の場合には利用できない可能性もあります。また一般的に65歳~80歳までの人しか利用できません。年齢制限があるのも大きなデメリットといえるでしょう。
不動産評価額が変動するリスクがある
リバースモーゲージを利用すると、不動産の担保価値に応じた融資額が融資されます。
ただし不動産の評価額は変動するので、借り入れたときの評価額がいつまでも適正とは限りません。たとえば借入時よりも不動産の評価が大きく上がった場合、数年後には「今借り入れを申し込んだらもっと多くのお金を借りられる状態」になる可能性があります。
反対に評価額が下がってしまうと、所有者が死亡したときに残債を全額返せないリスクが発生します。すると、相続人に負債が引き継がれ、迷惑をかけてしまうおそれがあります。
リバースモーゲージでは、不動産の評価額が変動するリスクがあることを常に頭に入れておく必要があるでしょう。
資金の使い道に制限がある
リバースモーゲージはお金を借りる仕組みですが、借りたお金は何に使っても良いわけではありません。多くの場合、生活費などの一部の目的に限定されます。たとえば事業資金に使いたいと思っても、許されません。
リースバックなら資金の使い道は制限されないので、それと比べるとリバースモーゲージにはデメリットがあるといえるでしょう。
相続人の同意が必要になる
リバースモーゲージを利用すると将来相続人ともめごとが発生する可能性があるため、利用時に相続人の同意を要するケースがあります。
相続人が同意しなければリバースモーゲージを適用できない可能性があるのです。リースバックであればこういった制限はないので、この点もリバースモーゲージならではのデメリットといえるでしょう。
資産評価額に対し、融資枠が小さくなるケースが多い
リバースモーゲージの場合、資産評価額に対して満額の融資を受けられるわけではありません。
不動産には価格変動リスクがあるので、どうしても保守的な金額にならざるを得ないのです。たとえば5,000万円分の価値のある物件でも2,500万円以下しか借りられない可能性があります。
リバースモーゲージで設定される借入限度額は評価額の5割程度と言われており、この点もリバースモーゲージならではのデメリットといえるでしょう。
適用できる物件の種類やエリアに制約がある
リバースモーゲージは、全国どこの物件でも利用できるわけではありません。担保価値の高い物件しか利用しにくい上、一戸建てしか適用できないとするサービスも多々あります(ただし商品によってはマンションでも利用できます)。リースバックであれば、物件に関する制限はありません。
適用できる物件の種類やエリアなどが限られるのも、リバースモーゲージならではのデメリットといえるでしょう。
リースバックとリバースモーゲージどちらがいいか
リースバックとリバースモーゲージ、それぞれに適しているのはどういった人なのでしょうか?
リースバックが合っている人
リースバックに向いているのは以下のような人です。
- 住宅ローンの支払が厳しいので家を売りたいが、その後も住み続けたい
- さまざまな事情でまとまった資金が必要だが、家を出て行きたくはない
- 家には2~3年住めればそれでいい(2~3年後には退去して別の家を探す予定)
- いったんは家を売却しても将来は買い戻して所有者に戻りたい
リースバックを利用すると、まとまったお金が手に入ります。住宅ローンも完済できますし、残ったお金があれば手元に残って好きなことに利用できます。お金が必要だけれども家に住み続けたい方に向いているといえるでしょう。
またリースバックで「定期賃貸借契約」を利用すると、2~3年程度で出ていかねばなりません。そういった契約を利用するのに向いているのは、「近い将来家を出ていっても良い」と考えている方です。そうでなくずっと家に住みたい方の場合には、「普通賃貸借契約」または、定期賃貸借契約でも再契約可能なリースバック業者と契約すると良いでしょう。
リバースモーゲージが合っている人
リバースモーゲージに向いているのは、以下のような人です。
- 生活費が足りない高齢者
- 家を相続したい相続人がいない
- 自分が死亡したら、家は空き家になる予定
- 担保価値の高い一戸建てに住んでいる
- 家の所有権を失いたくない
高齢で手元に資金がない方、家を相続したい相続人がいなくて将来は空き家になりそうなケースなどに向いていると考えられます。
リースバックを利用するなら専門店がいい
銀行などの金融機関からリバースモーゲージを紹介されたけれど、実際はリースバックの方が合っている方は多いです。
リースバックを検討するなら、リースバックの専門店に相談することをおすすめします。専門店から、リースバックとリバースモーゲージのメリットとデメリットの説明もしっかり受けられます。
また、リースバック専門店はお客様の状況に合わせて柔軟に対応することができますので、大手の不動産会社にはできないきめ細やかなサービスが得意です。
「イエする」は全国対応のリースバック専門店です。どんなことでもご相談ください。
結論:「売買」か「融資」か自分のニーズに合った方を利用しよう
リースバックとリバースモーゲージには「売買」か「融資」かという根本的な違いがあります。利用目的や利用者層も異なるので、自分のニーズに合った方を利用しましょう。
リースバックであれば専門のリースバック業者(不動産会社)に相談してみるのがおすすめです。イエするではお客様のニーズに合わせて柔軟なリースバック計画を建てさせていただきますので、お気軽にご相談ください。