リバースモーゲージは、高齢者が自宅を担保にして生活費を借りることができる金融商品です。しかし、リバースモーゲージは誰でも利用できるわけではなく、「人」にも「不動産」にも条件があります。
リバースモーゲージを利用するためには、基本は65歳以上の単身者または夫婦2人暮らしが対象になります。そのほかにも収入や、担保にする不動産の所在地や評価額などの条件を満たす必要があります。この記事では、リバースモーゲージの利用条件を詳しく解説します。
リバースモーゲージの基礎知識
リバースモーゲージの利用条件の前に、まずはリバースモーゲージの基本的な仕組みを確認しましょう。
リバースモーゲージとは
リバースモーゲージは、戸建てやマンションなどの自宅を担保にして、金融機関からお金を借りることです。つまりローンを組むことと同じで、金融商品です。借入金なので自宅に住み続けながらまとまった資金を得ることができます。
借りることができる金額の上限は、担保とする自宅の資産価値により決まります。一般的には、担保不動産の評価額の50%〜70%の金額を借りることができます。
リバースモーゲージの特徴として、生前は借りたお金の元本を返済する必要がありません。借入金の元本の返済は、借入人が亡くなったときに担保にした自宅を金融機関が売却し、その資金で返済することになります。
リバースモーゲージの種類
元本の返済は借入人が亡くなった後になりますが、利息分も合わせて亡くなった後に返済する商品もあれば、生前に毎月利息分の返済が必要な商品もあります。
リバースモーゲージを提供している金融機関によって内容や条件が異なりますが、下記のような活用方法があります。担保とする自宅の資産価値により、融資の上限額が決まっています。
- 活用方法①「年金型」
定期的に定額の融資を受け、毎月の返済はなし。亡くなったときに不動産を売却し一括返済する。 - 活用方法②「一括融資型」
一括でまとまった金額の融資を受け、毎月利息分のみを返済する。亡くなったときに不動産を売却し一括返済する。 - 活用方法③「自由融資型」
あらかじめ決められた限度内で必要な時に必要な金額の融資を受け、亡くなったときに不動産を売却し一括返済する。
リバースモーゲージを利用できる条件
リバースモーゲージを利用できる条件をみていきましょう。
- 年齢の条件
- 同居している人の条件
- 収入の条件
- お金の使い道の条件
- 推定相続人の同意が条件
①年齢の条件
リバースモーゲージの利用には年齢制限があり、通常は65歳以上が条件となります。金融機関によっては、60歳以上や50歳以上から利用可能な商品もあります。また、本人だけではなく、配偶者にも年齢制限がある場合が多いようです。
提供商品 | 年齢の条件 |
---|---|
不動産担保型生活資金 | 世帯の構成員が原則として65歳以上 |
リ・バース60 | 借入申込日現在で満60歳以上である方(満50歳以上も利用できる場合がある) |
金融機関のリバースモーゲージ | 50歳から利用できる商品もある |
②同居している人の条件
同居している人にも条件があります。基本的には、単身者または夫婦2人暮らしが対象になり、子どもや親族などが同居している場合は利用できません。しかし、同居している人が借入人夫婦どちらかの親の場合は利用できます。
同居している人がいる場合の注意点
借入人が亡くなった場合に、同居していた家族が契約を引き継ぐことができれば引き続き自宅に住み続けられますが、契約を引き継ぐことができないと自宅を出ていかなければなりません。
契約を引き継ぐためには、連帯保証人になっておく必要がある場合があります。借入人が亡くなった後の対応について、リバースモーゲージを利用する前に金融機関に必ず確認しましょう。
③収入の条件
リバースモーゲージを利用するには、安定した収入があるかも条件になります。その理由は、利息分の返済が毎月続くためです。収入が年金のみであっても、利息分を返済できると金融機関が判断した場合は、リバースモーゲージが利用できます。
収入が少なくてリバースモーゲージを利用したい場合は、自治体が運営しているリバースモーゲージ「不動産担保型生活資金」を検討しましょう。利用条件として、世帯員の収入が区市町村民税非課税または均等割課税程度の低所得世帯であることが条件となっているためです。
また、住宅金融支援機構のリバースモーゲージ「リ・バース60」は、年収に対する返済額の割合に条件があります。
提供商品 | 収入の条件 |
---|---|
不動産担保型生活資金 | 世帯員の収入が区市町村民税非課税または均等割課税程度の低所得世帯 |
リ・バース60 | 年収に占める全ての借入れに関する年間返済額および年間支払額の合計額の割合が次の基準を満たしている方(年収400万円未満の場合:30%以下、年収400万円以上の場合:35%以下) |
参考:社会福祉法人全国社会福祉協議会 都道府県・指定都市社会福祉協議会のホームページ(リンク集)
参考:住宅金融支援機構 60歳からの住宅ローン【リ・バース60】
他の借入金も合わせた総額を確認される
リバースモーゲージの審査では、他の借入金も合わせた総額を確認されます。住宅ローンの残債や車のローン、その他の借入金を含めた総額が対象となります。他の借入金が多い場合は、リバースモーゲージの審査が通らない場合があります。
④お金の使い道の条件
リバースモーゲージで得た資金の使い道は、限定されているケースが多くみられます。老後の生活資金確保を主な目的としていますので、事業資金や投資資金としては活用できないことがほとんどです。
国が運営しているリバースモーゲージ「不動産担保型生活資金」の場合は、原則生活資金に限定されていますし、住宅金融支援機構のリバースモーゲージは住宅関連に用途が制限されています。
提供商品 | お金の使い道の条件 |
---|---|
不動産担保型生活資金 | 生活資金のみ |
リ・バース60 | ・ご本人が居住する住宅の建設資金または購入資金 ・住宅のリフォーム資金 ・住宅ローンの借換資金 ・サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金 ・子世帯などが居住する住宅の取得資金を借り入れるための資金 |
⑤推定相続人の同意が条件
リバースモーゲージは、借入人本人が亡くなったときに、担保にしていた家を売却して返済するため、家を相続人に残すことができません。
そのため、リバースモーゲージの利用にあたっては、配偶者や子どもなどの推定相続人の同意が必要です。この同意を得られない場合も、リバースモーゲージの利用はできません。
リバースモーゲージの担保にできる不動産の条件
リバースモーゲージで対象となる不動産にも下記の条件があります。対象物件になるのは原則、一定評価額以上の戸建て住宅ですが、金融機関によってはマンションを対象としている商品もあります。
担保となる不動産の評価額が高ければ高いほど、借りられる金額が増えます。ただし、担保不動産の価値が低い場合はリバースモーゲージが利用できないと断られることが多いです。
担保にできる不動産の条件
リバースモーゲージで担保にできる不動産の条件について詳しくみていきましょう。
- 土地付き戸建て住宅であること
この条件の理由は、土地で担保価値を評価しているからです。時間の経過とともに資産価値が減少していく建物は、基本的に評価対象にはなりません。このことから、土地が借地権の場合は利用できません。 - 一定額以上の評価額があること
国が運営しているリバースモーゲージ「不動産担保型生活資金」の場合は、土地の評価額が概ね1,500万円以上の一戸建て住宅であることが条件となります。 - 抵当権等の担保権が設定されていないこと
リバースモーゲージを利用するには、金融機関を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定する必要があるためです。さらに、賃貸権などの利用権が設定されていないことも条件となります。 - 所在地が首都圏、関西圏、主要都市などであること
リバースモーゲージでは借入人が亡くなって不動産を売却するため、不動産購入の需要が多いエリアに限られることが理由です。
リバースモーゲージと生活保護の関係
生活保護を受給する必要があるくらい生活に困窮していて、自宅不動産を所有している場合には、国が運営しているリバースモーゲージの「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」を利用することができます。
「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」とは、要保護の高齢者世帯に対し、居住用不動産を担保として生活資金の貸し付けを行っている国の生活福祉です。
しかし、一定の資産を持っている世帯や、自宅の価値が高い場合は生活保護の対象にはなりません。たとえば、貯金がある場合や、生活に利用していない不動産を所有している場合は、売却して生活費に充てる必要があります。
リバースモーゲージのメリットとデメリット
リバースモーゲージは、高齢者が自宅に住み続けながらまとまった資金を得られることが主なメリットですが、利用できる条件が厳しいことが大きなデメリットです。
リバースモーゲージのメリット
- 老後の生活資金を確保できる
まとまったお金を借りることで、老後の生活資金を確保することができます。 - 自宅に住み続けることができる
利息分の返済を滞りなく返済している間は、自宅に住み続けることができます。 - 元本の返済が不要
生存中は元本を返済する必要がありません。利息分のみを毎月返済していくので、通常のローンと比べると負担が少ないです。
リバースモーゲージのデメリット
- 利用できる条件が厳しい
これまでご説明した通り「人」にも「不動産」にも条件があり、利用できる場合が限られています。 - 対象物件が限られる
一定の評価額以上で、首都圏、関西圏、主要都市にある不動産のみが対象になります。 - 対象となる人が限られる
年齢制限だけではなく、同居人や他の借入金の総額、収入にも条件があります。 - お金の使い道が限定される
自治体が運営するリバースモーゲージで得たお金は、生活資金にのみ、使うことができます。金融機関の提供しているリバースモーゲージも、お金の使い道が制限されていることが一般的です。 - リバースモーゲージの3大リスク
リバースモーゲージには、必ず確認するべき3大リスクがあり、「金利上昇リスク」「不動産価格下落リスク」「長生きリスク」です。特にご注意いただきたいのは、自宅で生活ができるくらい元気に長生きしたことで、望まない結果をまねくことがある点です。リスクをよく理解してから利用の検討をしてください。
リバースモーゲージの条件に合わないならリースバックがいい
これまで見てきたとおり、リバースモーゲージは厳しい条件が設定されていますが、リースバックはそこまで厳しい条件はありません。
実際に、リバースモーゲージの条件が合わなくてもリースバックを利用されている方が多くいらっしゃいます。当社リースバック専門店の「イエする」でも、リバースモーゲージとリースバックどちらがいいか?というご相談を数多く受けてきました。リバースモーゲージの条件が合わなくても諦めずに、まずはお問い合わせください。