リースバックを利用するとき、将来家を買い戻して所有者に戻りたいと考える方が多くいらっしゃいます。リースバックした家を買い戻すことは「再売買(さいばいばい)」とも呼ばれます。
ただし必ずしもすべてのケースでリースバックした家の買い戻し(再売買)ができるわけではありません。この記事では、リースバックした家の買い戻し(再売買)の仕組みと方法、資金調達方法や注意点を解説します。リースバックを利用しても将来的に家を買い戻したい方は、ぜひ参考にしてください。
リースバック後の買い戻し(再売買)の仕組み
リースバックは、リースバック業者へ自宅を売却して、まとまった資金を確保したうえで、新しいオーナーと賃貸借契約を結び、賃貸住宅として自宅に住み続けられる仕組みです。売却でまとまった資金を確保できる点と、売却後も自宅に住み続けられる点が主な特徴といえます。
リースバックを利用すると家(不動産)を売ってしまうので、家の所有権を失いますが、数年後などの将来に家を買い戻すことが可能です。リースバックの買い戻しとは、リースバックの契約を締結する際などにつける「再売買の予約」を意味します。つまり、いったんは家を売っても後で再度、売買契約を締結し不動産の所有者に戻るのが再売買の仕組みです。
なお、すべてのリースバック業者が再売買に対応しているわけではありません。家の買い戻しを希望する場合、再売買に対応しているリースバック業者を選ぶ必要があります。
買い戻し特約とは?
リースバックでいったんは家を売るけれども、その際に「将来契約を解除できる特約」をつけておくことが「買い戻し特約」です。「再売買の予約(買い戻し予約)」とも言います。
法律の民法では「買戻し特約」について規定されています。民法の買戻し特約は、「一度締結した不動産売買契約を売主が解除して買主から取り戻す解除権の留保」と考えられており(民法579条)、必ずしもリースバックの買い戻しとは一致しません。
買い戻し予約と民法の買戻し特約との違い
リースバックの「再売買の予約(買い戻し予約)」と民法の「買戻し特約」はよく似ているので混同されるケースもありますが、両者は異なります。以下で違いをみてみましょう。
リースバックの再売買の予約(買い戻し予約) | 民法の買戻し特約 | |
---|---|---|
1. 締結するタイミング | 同時に締結する必要なし | 売買契約と同時 |
2. 買戻すまでの期限 | 期限制限なし | 最長で10年(特約を付けなかった場合5年が最長) |
3. 必要な金額 | 当事者の自由 | 売却価格と契約費用を超えない |
4. 対象の資産 | 不動産に限られない | 不動産が対象 |
1. 契約を締結するタイミング
まずは契約内容を取り決めるタイミングが異なります。リースバックの「再売買予約(買い戻し予約)」の場合、必ずしも売買契約と同時に締結する必要はありません。民法の「買戻し特約」の場合、基本的には売買契約と同時に定めておく必要があります。
2. 買戻すまでの期限
買い戻しの期間についても違いがあります。リースバックの「再売買予約(買い戻し予約)」の場合、買い戻すまでの期限制限はありません。民法の「買戻し特約」の場合、買い戻すまでの期限は最長で10年です。特約をつける際に買い戻し期間について定めなかった場合、期間は5年が最長になります。
3. 買い戻すために必要な金額
買い戻しに必要な金額も異なります。リースバックの「再売買予約(買い戻し予約)」の場合、買い戻すための金額は当事者が自由に取り決めてかまいません。リースバックの場合のように、売却価格が再購入価格より高くなるケースもよくあります。民法上の「買戻し特約」の場合、買い戻し価格は売却価格と契約費用を超えることができません。
4. 買戻しをする対象の資産
リースバックの「再売買予約(買い戻し予約)」の場合、買い戻し対象資産は不動産に限られません。どのような資産でも対象にできます。一方、民法の買戻し特約は不動産を対象とする規定です。
以上のようにリースバックの「再売買予約(買い戻し予約)」と民法の「買戻し特約」は異なる概念です。混同しないようにおぼえておきましょう。
買い戻し費用の計算方法と価格相場について
リースバックで自宅を売却した場合、再売買価格はどれくらいになるのでしょうか?再売買価格の相場と再売買価格の計算方法を解説します。
再売買価格は実際の売却価格よりも高くなる
リースバックの再売買価格は、売却価格よりも高くなることが多いと考えられています。売却価格に以下の費用が加算されるからです。
売却価格に加算される費用
- 売却時にかかった費用
- 再売買時にかかる費用
- リースバック業者の利益(ケースによっては)
具体的には、登記費用や不動産取得税、固定資産税、人件費などのかかった費用が加算されます。これらの合計額は、売却価格の1割以上になることが多いようです。リースバック業者が損をする価格設定になることは少ないので、基本的には売却価格よりも高くなると考えておくほうがよいでしょう。
再売買価格の計算方法と価格相場
具体的に、再売買価格はどれくらいになるのでしょうか。再売買価格の相場は、売却価格の110%~130%程度といわれています。したがって、再売買価格の目安は以下の計算式で求められます。
再売買価格 = 売却価格 × 110%~130%
たとえば、売却価格が2,000万円であれば、再売買価格は次のようになると考えられます。
2,000万円 × 110%~130% = 2,200万円~2,600万円
売却価格が1,500万円であれば、再売買価格は次のようになると考えられます。
1,500万円 × 110%~130% = 1,650万円~1,950万円
以上の金額はあくまでも目安のため、実際の再売買価格はリースバック契約前に個別に確認する必要があります。いずれにせよ、リースバックの再売買は一般的な不動産売却よりも条件的には悪くなる可能性があります。愛着のある自宅を再購入したいなど、目的を明確にしたうえで利用しましょう。
買い戻し(再売買)にかかる費用
リースバックで不動産を買い戻すにはどのくらいの費用がかかるのでしょうか?以下で費用の内訳や相場をみてみましょう。
- 家の買い戻し代金
- 登録免許税
- 司法書士の手数料
- 印紙税
- ローン保証料、手数料
- 事務手数料
1. 家の買い戻し代金
家を買い戻す代金が発生します。相場はリースバック契約で売却した売却額の1.1~1.3倍程度です。
2. 登録免許税
「登録免許税」は、不動産の所有権を移転する登記を行うためにかかる税金です。物件の固定資産評価額によって金額が変わります。
3. 司法書士の手数料
所有権移転登記や抵当権設定登記などを司法書士に依頼する際にかかる費用です。依頼する司法書士事務所によって異なりますが、ローンを利用しない場合の相場は5~10万円、ローンを利用する場合の相場は10~15万円となっています。
4. 印紙税
売買契約書に貼り付ける印紙代です。売買物件の金額によって費用が異なり、たとえば不動産の売買代金が1,000万円未満であれば5,000円、1,000~5,000万円の場合には10,000円、5000万円~1億円の場合に30,000円がかかります。
5. ローン保証料、手数料
住宅ローンを利用して家を買い戻す場合、借入先の銀行へローン保証料や手数料がかかります。住宅ローンを利用せず現金で再売買する場合は、住宅ローンに関する費用は不要です。
6. 事務手数料
リースバック業者によっては買い戻しの条件として、家の買い戻し代金とは別に事務手数料が規定されているケースがあります。事務手数料が必要な場合、買い戻し価格の1%~3%程度が相場となっています。ただし、事務手数料が無料のリースバック業者もあります。リースバックの契約時、買い戻し予約をつける際に確認しておくと良いでしょう。
買い戻す(再売買)時に損しないポイント
リースバックで不動産を買い戻すときに損をしないよう、以下のような点に注意しましょう。
売却価格(買取価格)は無理のない金額にする
買い戻しを成功させるには、「無理のない金額で買い戻す」ことが重要です。たとえば無理をして高額な住宅ローンを組んで再売買しても、将来的に支払いが厳しくなってしまうでしょうし、不動産価格が高すぎると住宅ローンを組めずに買い戻しできなくなる可能性もあります。リースバックを利用する際にリースバック会社とよく話し合って、買い戻しが可能な範囲の売却価格に決めておきましょう。
買い戻し金額を固定する
リースバッで再売買をするなら、リースバック契約時に再売買の金額を固定しておくようおすすめします。固定しておけば、将来的に予想外に高額な費用がかかる心配がありません。リースバック契約時にリースバック会社と話し合い、決まった金額は契約書に明確にしましょう。
買い戻し資金は計画的に貯蓄しておく
リースバックを利用する時点ですでに再売買することを決めているなら、早いうちから買い戻しのための資金を貯蓄しましょう。すべてのケースで住宅ローンを組めるとは限りません。住宅ローンを組めない可能性も視野に入れて、いざというときに自己資金で購入できるだけの資金があると安心です。
再売買(買い戻し)の資金調達方法
リースバックで再売買をする場合の資金調達方法としては以下のような手段が考えられます。
貯金する
まずは買い戻しの時期に向けて貯金する方法があります。十分な貯金があれば、ローンを組まなくても家を買い戻せます。また、買い戻し方法が「再売買予約(買い戻し予約)」であれば、再売買時期を比較的自由に取り決めできますし、当初取り決めた期間を延長もできます。貯金が間に合わない場合は、リースバック業者へ再売買の時期を先延ばしできないか相談してみましょう。
住宅ローンを利用する
貯金が難しい場合、住宅ローンの利用を検討しましょう。リースバックの再売買も住宅ローンの適用対象です。ただし、過去にローンを滞納してブラックリスト状態になっている場合は、審査に通らない可能性が高まります。住宅ローンは必ず利用できるとは限らないので注意が必要です。
親族からの援助
自力での資金調達が難しいなら、親族から援助してもらう方法も検討しましょう。親族から援助してもらえたら、自己資金が不足していても住宅ローンを組めなくても家を買い戻せる可能性があります。
なお、購入資金の一部について親族から支援を受ける場合は、住宅ローンを利用しようとしても「親族間売買」とみなされて住宅ローン審査に通らなくなる可能性もあります。親族から資金援助を受ける場合、早めにリースバック業者へ伝えて相談しましょう。
再売買(買い戻し)で住宅ローンを使うには
リースバックの再売買でも住宅ローンは利用できます。自己資金が不足する場合、金融機関で相談してみると良いでしょう。金融機関によっても審査の結果が異なるので、ある金融機関で審査に落ちても他の金融機関なら通る可能性があります。
ただし、過去に住宅ローンを滞納してリースバックを利用した方は、いわゆる「ブラックリスト」の状態になっており、審査に通らないケースもあるので注意が必要です。たとえば過去に住宅ローンを長期にわたって滞納すると、個人信用情報に事故情報が登録されて住宅ローンを一切利用できなくなってしまいます。ブラックリストの登録期間はおおむね5~7年程度です。
過去に延滞などがなくブラックリスト状態になっていないケースでも、収入や年齢などの審査項目で審査に通らない可能性はあります。リースバックで住宅ローンを利用したい場合にも、リースバック業者からアドバイスを受けられるケースがあります。困ったときにはご相談ください。
再売買(買い戻し)できなくなるケース
以下のような場合、リースバックの再売買ができなくなるので要注意です。
家賃を滞納した
リースバックの契約によっては、1回でも家賃を滞納すると買い戻しの権利が失われるケースがあります。また、賃料を3か月分以上滞納すると、リースバック業者から賃貸借契約を解除されて物件から強制退去させられる可能性があります。
リースバックの利用後に家賃を滞納しないよう、契約前に家賃の額を確かめて支払えるかどうかのシミュレーションをしておきましょう。再売買をしたい方は特に、リースバック契約後は決して家賃を滞納しないよう、慎重に生活しましょう。
契約時に買い戻す取り決めをしていない
将来において家を確実に再売買をするには、リースバックの契約時に再売買について契約書に明記しておかなければなりません。取り決めをしていない場合や、契約書に買い戻しが明記されていない場合は、リースバック業者から買い戻しを拒否される場合があります。
また、リースバック業者によっては、そもそも買い戻しに応じていないケースもみられます。リースバック後の再売買を利用したいなら、必ずリースバック契約時に再売買の可否や条件を確認し、契約書に内容を盛り込みましょう。
再売買(買い戻し)のための資金を用意できない
リースバック後に家を再売買したい場合、売却価格より高額になるケースが多いです。支払いをするためには再売買時までに貯金などをして再売買資金を用意しなければなりません。貯金もできず住宅ローンも組めず親族からの支援も受けられなければ、再売買は難しくなるでしょう。
リースバックで再売買を利用する際には、当初の契約時に将来支払える範囲の再売買価格を取り決めておきましょう。その上で、契約書に明記しておくことが必要となります。
買い戻しを検討するなら知っておきたい注意点
リースバックで自宅の再売買を希望している方は、以下の点に注意が必要です。
リースバック契約締結時に物件の再売買を確認
自宅の買い戻し(再売買)を希望している方は、リースバック契約締結時に物件の再売買が可能であることを確かめておきましょう。契約内容によっては、希望を実現できないことがあるからです。
再売買できる場合も、契約書にその旨を記載しておくことをおすすめします。口約束だと、申込んだときにリースバック業者との間で水掛け論になることや、リースバック業者が第三者へ物件を転売して約束が曖昧になってしまうことがあるからです。契約書に記載しておけば、無用なトラブルを防げます。
再売買の金額と時期は「固定」か「変動」か
再売買の時期と金額にも注意が必要です。再売買の時期と金額には、「固定」と「変動」があります。ここでいう「固定」とは、契約時に再売買の条件を決めておくことです。たとえば、「再売買の価格を1,000万円とする」、「再売買できる時期を10年以内とする」などが当てはまります。「変動」は、契約時にこれらの条件を定めないことです。
どちらにもメリット・デメリットはありますが、リースバックを利用する方にとって最も有利と考えられているのは、再売買価格を「固定(契約時に確定)」にして、時期を「変動(いつでも再売買できる)」にする契約です。この契約内容であれば、じっくりと再売買に備えられます。
賃貸契約の契約内容をしっかり確認
再売買を希望している場合は、賃貸契約の内容もしっかりと確認しておく必要があります。基本的に、再売買は賃貸契約を守ることが条件になっているからです。たとえば、家賃を数カ月滞納すると、再売買の権利を失う恐れがあります。賃貸契約の内容を確認して、その内容を守るようにしましょう。
買い戻し予約でリースバック利用するなら専門店がいい
リースバックを利用して、将来的に再売買を検討している方は、リースバック専門店「イエする」にご相談ください。イエするは、リースバック契約締結時に、再売買のお約束をいたします。再売買価格は「固定(契約後に価格が上昇することはありません)」、再売買時期は「変動(お客様のご事情に合わせて再売買が可能です。)」です。何かしらの理由でご希望を実現できない場合も、ご自宅から退去していただく必要はありません。多くの方に安心してご利用いただけます。
イエするでは、リースバックの専門家が「必要な資金の額」と「お支払い可能な家賃の額」をお客様からおうかがいしたうえで、最適なプランを提案させていただいています。エリアを限定せず、日本全国の物件に対応している点も強みです。将来的な自宅の再売買を見据えている方は、お気軽にご相談ください。